当医院が取材を受けました。

地域で本当に必要とされる「かかりつけ医」としてのクリニックのあるべき姿等を記事にされている、日本医療企画さんの「BAMBOO」に当医院がインタビューを受けました。

2018年12月号

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「地域診療所レポート2」

京都府八幡市
<地域データ>
人口:7万1447人(2018年9月時点)
世帯数:3万2800世帯(2018年9月時点)
65歳以上人口:2万1500人
75歳以上人口:9639人
要支援/要介護認定者数:3717人
在宅療養支援診療所数:5ヵ所

・POINT

①プライバシーを守る完全個室診療
診察室やカウンセリングルーム、子ども専用診察室、予防専用ケアルームなどは、治療音や相談内容が聞こえないように完全個室設計。
②来院しやすいバリアフリー設計
土足のまま車椅子などが出入りできるバリアフリー設計。受付もハイカウンターではなく、座って話せるローカウンターも完備。
③保育士による無料託児サービスを実施
キッズスペースのほか、要予約で治療中に保育士が子どもを預かる無料託児サービスを実施。職員の子どもを対象に企業主導型保育施設も併設する。

 

「京都府八幡市 あゆみ歯科クリニック」
○予防歯科や歯周病治療に注力
地域の残存歯数増に貢献したい

・歯科らしさを払拭し来院のハードルを下げる

京都市や大阪市のベッドタウンとして知られる京都府八幡市に2009年、あゆみ歯科は開院した。ガラス張りのカフェのような外観に、院内は自然光が入りアロマが漂うリラックス空間を演出、機能面も、車いすやベビーカーでそのまま出入りできる完全バリアフリー設計のほか、診察室やカウンセリングルームなどは完全個室で、治療の音や患者の相談内容が他の患者に聞こえないように配慮。こうした環境下で、1人の患者に約1時間かけてじっくり診療を行っている。これらの配慮や雰囲気づくりについて、福原隆久院長は次のように語る。
「勤務医時代に、『歯科=怖い、痛い』というイメージがあるために歯科から足が遠のき、歯や歯茎の状態が悪化してしまう人を多く見てきました。また、相談や説明が隣の診察室にいる人に聞こえてしまうことを嫌がったり、「子どもが泣くかもしれないから」と来院を躊躇する患者さんもいます。そんな患者さんもいます。そんな経験から、歯科受診のハードルを下げたいと思ったのです。」
こうした従来のイメージを払拭したオープンな空間づくりが功を奏したのか、開院時には225件の予約が殺到した。現在も1日当たりの外来患者数は130人前後と、堅調に推移。患者増に伴い建物を増築したほか、5年前からは訪問歯科診療もスタートし、子どもから高齢者まで幅広くカバーする体制へ移行している。
また、ハードだけではなく、子どもが歯科診療所に来るのを楽しみにするようなイベント企画にも継続的に注力。たとえば、七夕やハロウィンといった季節のイベントはもちろん、幼児向けの職業体験やゲーム、ワークショップなどが楽しめる「あゆみ祭り」を年1回開催。「歯科=怖い、痛い」というイメージを改善し、まだ来院したことのない人にもイベントをきっかけに、その後の受診につなげていきたい狙いだ。

 

・チームワークを強化し院内の雰囲気を醸成

そんな同院を支えるのは、11人の歯科医師、18人の歯科衛生士を筆頭する、総勢69人のスタッフだ。福原院長は、組織の拡大とともに、常にチームワークの強化にも取り組んできたと振り返る。
「同じ職場でも、シフトが違ったり職務上の接点がないとほとんど会話もなく、院内の雰囲気もよそよそしくなります。そこで、スタッフを職種や年代に関係なく無作為に5つのチームに分け、『キャンセルを防ぐには』『清掃について』などの課題について話し合う、グループワークを月1回開催しています。皆で話し合う機会を増やし、円滑な人間関係につなげるためです。」
さらに月1回、当日出勤しているスタッフ全員が飲食店で昼食を食べながらコミュニケーションを図る、ランチミーティングを実施。また、スタッフの提案で、毎朝朝礼後に全員で声をかけ合ってハイタッチをする習慣をつくるなど、院内全体の一体感を高めている。

 

・患者・スタッフ両方を助ける保育施設を併設

これらのスタッフがより働きやすいように、15年には企業主導型保育施設の併設を決めた。
「信頼するスタッフの妊娠がきっかけでした。退職しなくてもよく、安心して働いてもらえる環境をつくろうと考えたのです。これにより、出産・育児のため一度退職したスタッフ復職してくれたり、離職が減り、パートタイマーの応募も増えたりしました」(福原院長)
保育士が常駐する強みを活かし、予約制で患者の治療中に小さな子どもを預かる無料保育サービスもスタート。キッズスペースも完備しているため、乳幼児連れのリピーターを増やしている。
今後の展望について福原院長は、開業当初から掲げる「地域住民の残存歯数日本一」の実現を挙げる。
「残存歯数と認知症や寝たきりになる割合の関連は、学会などでもよく取り上げられています。日本は平均寿命は長いですが、寝たきり率も世界一高い。予防歯科や歯周病治療に注力し地域住民の残存歯数が増えれば、京都南部の寝たきり率は下がり、健康寿命の延伸につながるはずです。そのためにも、一生通い続けたいと思える診療所を目指して努力し続けたいと思っています。」
16年に分院も展開。残存歯数向上に向け、同院の新しい歯科治療のスタンスを広げていく方針だ。